古本を長く読むために、最初に直したいのは棚からの出し方だ。両隣の本を少し奥へ押し、読みたい本の中央付近を持って抜く。背表紙の上端を引っ張る出し方をやめるには、指が入るだけの余白も要る。

背表紙は、本を棚へ立てたときに手前へ見える細い面。本はページを綴じて表紙を付けたものなので、端の一部分へ力をかけたり、開く角度を無理に広げたりすると傷めることがある。図書館の案内も、背の上端に指をかけないこと、弱った本を無理に開かないことを勧めている。手入れを始める前に、どこへ力をかけるかを知っておきたい。取り出すとき・開くときの基本

取り出したら、本を閉じたまま表面のほこりを払う。読むときは自然に開くところまで。戻すときは倒れないよう支える。この一往復が無理なくできれば、普段読む本の手入れとして役に立つ。染みを落とす作業は、急がなくていい。

この記事の到達点は、乾いていて大きく崩れていない一冊を、次にも無理なく取り出して読めるようにすること。古い本を買ったばかりの人も、いきなり補修道具をそろえる必要はない。まず一冊の表紙とページを見て、傷みの程度を確かめ、普段の出し入れと掃除を整える。

目次

背の上端を引かずに、中央を持てる棚にする

背表紙の上が少し破れている本を見ると、そこへまた指をかけるのはためらう。それでも棚が詰まっていると、つかめる場所がない。本の扱い方と棚の空き具合は、一緒に直すほうがよい。

東京都立図書館が紹介するのは、取り出したい本の両隣を軽く奥へ押して、目的の本の中央を持つ方法だ。上端だけを引くと、その部分を壊す原因になる。図書館資料の取り扱い・3ページ

両隣の本を奥へ押してすき間を作り、中央の本の真ん中をつかんで取り出す2コマのイラスト
1:両隣を少し奥へ押す。2:読みたい本の中央を持って手前へ。隣が動かなければ、先に何冊か移します。図書館の案内に基づく説明用イラスト(AI生成)
隣を少し奥へ。中央を持って、手前へ。
  1. 1 持つ場所を作る

    隣の本を少し奥へ押し、指が入るすき間を空ける。

  2. 2 中央付近を持つ

    読みたい本の背の上端を引っ掛けず、中央付近をつかむ。

  3. 3 引き出す

    中央付近を持ったまま、手前へ取り出す。

隣の本が動かなければ、先に何冊か移して場所を作る。

両隣が動かなければ、まず何冊か別の段へ移す。無理に指をねじ込んだり、上から本を引っ掛けたりしない。中央付近を持ったまま手前へ抜き、机に置く。本が開く前に、表紙の外れやページの崩れがないかも見る。

戻した本が斜めになるなら、本の並びの端で倒れを支える「ブックエンド」を使う。支えを寄せすぎて、本を抜く余裕までなくさない。通常の本は垂直に立て、大型・重量のある本や和装本は平置きにするという案内もある。大きな画集まで、文庫の並びに立てて押し込む必要はない。棚への置き方・1〜2ページ

「砂の栄冠」などの本が並ぶ本棚
提供者の愛読書兼バイブル「砂の栄冠」。本棚の写真:本人提供

乾いたほこりなら、閉じたまま払う

机から飲み物や食べ物を移し、手を洗ってよく乾かす。使うのは清潔で柔らかい乾いた布かブラシだ。台所用の布を兼用すると、汚れや水分を本へ移すことになる。

表紙がしっかりしていて、乾いた表面にほこりがある。その状態なら、開く前に軽く払う。米国国立公文書館の案内では、表紙には柔らかい乾いた布やブラシを使い、ページの断面は表紙を閉じてページ同士を押さえ、柔らかいブラシで扱う。ほこりをページの間へ入り込ませないためだ。Bound Materials〈英語〉

強くこするほどきれいになるとは限らない。布を動かしたところで表紙の表面が剥がれる、紙が欠けるなら中止する。ほこりが取れた後に残る茶色い点や染みも、同じ掃除の続きをすれば落ちる汚れとは考えない。

目の前の状態で、次の手を分ける
乾いていて、表面にほこりがある
本を閉じ、柔らかい乾いた布やブラシで軽く払う。
ほこりを払っても染みが残る
こすり続けず、液体を足さずに止める。
濡れ・カビらしいもの・崩れる紙がある
この乾いた本の掃除を進めず、状態を伝えて保存修復の専門家へ相談する。

判断できない汚れは、保存修復の専門家に状態を見てもらいます。

東京都立図書館のQ&Aは、資料の重要性、利用頻度、傷みの程度によって修理方法が変わり、修理しないほうがよい場合もあると説明している。古い染みが気になっても、家庭の洗剤や水で試す段階へ進めない。紙の状態を見ずに落とそうとすると、見た目以外の傷みを増やしかねない。保存・修理についてのQ&A

茶色い染みが残っても、表面のほこりを払えたところで今日の掃除を終える。

たとえば、棚から出した本の上側に乾いたほこりがあり、払ったあとも紙へ茶色い点が残ったとする。最初のほこりを払うのが、ここでできる掃除。残った点の原因を決め、紙へ薬剤を使うのは別の判断になる。点の色だけでカビだと診断せず、迷う状態なら写真を添えて相談する。手を止める場所も、扱い方の一つだ。

開く角度と、閉じたときの厚みを見る

本が自然に開く位置で手を止める。平らになるまで押さえつけると、ページを綴じた部分や表紙をつなぐ部分に無理がかかる。開いた表紙とページの重みを受ける支えを使う方法は、米国国立公文書館も案内している。手で支えても読む角度を保てない本なら、本を置く角度と重さを支える書見台などを検討したい。本の開き方と支え方〈英語〉

読みかけには、薄い紙やリボンのしおりを挟む。閉じた本がふくらむほど厚い物や、ページを挟む金属製の道具は避ける。角を折った目印は折り目が残り、弱い紙では角が欠けることもある。読むときの扱い方〈英語〉

薄いしおりを読書席へ一枚置いておくと、レシートや近くの小物で代用する前に手が届く。見開きのまま伏せて席を立つ代わりに、しおりを挟んで閉じる。少し面倒でも、本を押し広げた形のまま残さずに済む。

戻す場所は、昼間の光と熱まで見る

夜には落ち着いて見える棚でも、昼には背表紙へ日が当たることがある。窓際の一段、暖房の風が届く場所、結露する窓の近く。棚のどの部分に本を戻すかで、周りの条件は変わる。

光による褪色を防ぐには、残したい本へ直射日光を当てない。熱や湿気の発生源からも離して置く。米国国立公文書館が一般向けに挙げる保管の基本だ。本の保管場所〈英語〉

国立国会図書館も、温湿度、過度の光、ほこりなどに配慮した保存環境を説明している。家庭ではまず、日差しや暖房が直接当たる数冊を移すところから始められる。図書館の空調設備をまねる前に、いま熱が当たっている一冊を動かす。国立国会図書館の保存環境〈英語〉

破れを見つけたら、貼る前に残し方を決める

少し裂けたページへテープを貼る作業は短い。ただ、一度貼った粘着剤は紙に入り込み、後から取り除きにくくなる。「補修用」「和紙」と書かれたテープにも、この問題がある。東京都立図書館は、保存する期間や資料の価値に応じて使うかを判断するよう説明している。粘着テープによる修理の注意点

長く残したい本、何度も修理して読みたい本なら、ここは貼らずに止める。表紙と傷んだ部分の写真を撮り、どこが外れたか、いつ気付いたかをメモする。相談では「ページを読めるようにしたい」「今の表紙を残したい」と、戻したい状態を伝えると話を始めやすい。

借りた本なら、まず借りた図書館へ傷みを伝える。自分の本なら、本の保存修復を扱う専門家へ、状態と希望を伝えて相談する。すでに紙や表紙が外れているときも、元の場所へ無理に押し戻したり、その場で接着したりせず、外れた部分を本と一緒に保管する。貴重な本や濡れた本、カビが疑われる本も、乾いた表面の掃除とは扱いを分けたい。

ほこりを払った一冊を棚へ戻す。中央を持てる余白があり、手を離しても倒れない。今は読む場所を支える道具が必要か、棚の端の支えが必要か、それとも用品を増やさず置き方だけを変えるか。今日困った動作から選べばよい。次に読むときも、そのまま取り出せる。